11月中旬以降に読んだ本
[シュトヘル 2] 伊藤 悠
シルクロードのしかも中央アジア! を舞台にした新シリーズ2巻目。
漠然とイメージはされても漫画化されることも珍しい土地柄だったのが、乙嫁語りの舞台もそういえば中東寄りの中央アジアでした。流行なんですかね。
シルクロードといえば馬やラクダが欠かせませんが、馬の書き分けが顔でできる作家さんなので安心。しかし、画面に馬が出てきたら即死にフラグ、なんて容赦ないんだ。
伊藤悠オリジナル作品では面影丸、そしてその後日譚にあたる短編・黒白しか読んでないのですが、伊藤作品はいずれも苛烈で迷わない登場人物が多いように見受けられます。今巻から登場した行商人アルファルドもまた、そんな一人。
シュトヘルを初め、その他の登場人物(敵味方を問わず)がどれも迷うことをしない人たちばかりの中では比較的人間臭さを感じられるキャラクターで、機微に聡い彼のとりなしでシュトヘルがユルール一行に加わり、宋への逃避行がはじまります。
彼もまた何の縁も無いユルール一行に加わって宋へと旅立つのですが、危険な逃避行に加わるその動機がただひとつ、シュトヘル。
行商人として暮らしていた彼がある日、シュトヘルという「生き物」に出会ったことで人生を狂わされてしまう。それまでの人生をかなぐり捨てて、もう無心でシュトヘルについていく。すべての行動は単にシュトヘルを間近で見ていたいが為です。
シュトヘルを「物差しのない美しい生き物」と言い切る、アルファルドのその憧憬も純粋だけど同時に剣呑さをはらんだもので、ふとシートン動物記やジャック・ロンドンの小説を読んでいるような、懐かしい感覚を思い出しました。
[神曲奏界ポリフォニカ アドヴェント・ブラック] 大迫 純一
冷静に距離をとって眺めると、お約束がこれでもかこれでもかという直球ラノベなんですけれども、だからこそスレイヤーズ世代も安心して読める、なんとなく読んじゃう魔性のシリーズです。
身長2m50cm、本来なら偶数のはずの羽は3枚とひたすら規格外、正体不明の精霊マナガおじさんの正体がついに明かされ、主役コンビの謎に迫る一連のエピソードも今巻をもって終了。こうしてみるとこれまで結構ヒントがほのめかされてたんですね。なるほどなるほど。
しかしアレがああなるのなんて、えらい反則技ですよ。ん、ということはレオンはつまり?
[毒杯の囀り] ポール・ドハティー
エドワード3世崩御まもない14世紀イギリスはロンドン。富裕な貿易商が寝室で毒殺され、寝酒に毒をもったらしい執事は屋根裏で縊死していた。当然自殺と思われたが、クラストン検死官とその書記アセルスタン修道士はそれを他殺と見抜いて以下略。
全体にミステリ仕立ての時代劇小説という按配で、ロンドン市井の貧乏教会をひとりで切り盛りしているアセルスタン修道士は、さながら貧乏長屋の浪人。「うおー、死体をみせろー!」というテンションで図書館で借りてしまったのでちょっと肩透かしでした。みんなカーとブラッカイマーが悪い。最初から歴史小説を読むつもりで読んでたらよかったんですが、現代の話なのかと勘違いしてたんですよね。 重要な配役でジョン・オブ・ゴーントことランカスター公、黒太子の息子の少年王まで登場していてビックリ。
この後、次第に険悪な間柄になっていく叔父と甥も、まだ10歳ということでまだ比較的和やかな時間を過ごしているようです。しかし、すでに宮廷は少年王派とランカスター公派に割れており、二人の間に早くも緊張感が漂っており、続巻ではさてどうなっていくのか。
史実では忠臣であったランカスター公なのですが、どうも判官贔屓の風潮があるようで、このお話でも実に憎憎しく書かれています。相手が黒太子の息子で10歳の美少年では分が悪い。
そういう歴史の醍醐味もさりながら、通俗小説として筆致が冴え渡るのが当時の衛生観念の無さ。
公開処刑された死刑囚がずっと腐るまで絞首刑台にぶらさがってるとか、塔の上に生首が陳列してあるとか...はまだ予備知識があるからいいんですが、酒場のビール樽の蓋が開いていてその縁に鶏が止まってるとか(そして相棒が鶏糞入りビールを飲んでも何も言わない主人公アセルスタン)ローブローがガスガスと。ペストとかそりゃあ蔓延するよね! 舐めてたよ14世紀ロンドン!
...こういう時、清潔感あふれる日本のファンタジーっていいなって思いますね。ええ。



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