12月上旬に読んだ本
最近は寒いんで、家で本ばっかり読んでます。
[彷徨える艦隊〈4〉巡航戦艦ヴァリアント] ジャック キャンベル
100年に渡って戦争状態を続ける二大勢力、アライアンスとシンディック。
シンディックの罠により敵陣深くおびき寄せられた満身創痍のアライアンス艦隊を率い、アライアンスの勢力下にまで導くことになったのが、100年間に及ぶ冷凍睡眠から目覚めたギアリー大佐。
当初は100年分のカルチャーギャップに戸惑い、ギアリーを盲目的に英雄視する部下や敵対的な艦長たちとの軋轢、政治家の牽制球などに苦しみながらも、一枚岩とは言いがたいアライアンス艦隊を人望によってどうにか纏め上げ、各星系を転戦しながらシンディック勢力圏外へいよいよ近づいてまいりました。
そんなギアリー大佐の毎日を要約すると、
デシャーニ艦長以下ブリッジクルーの目が爛々と輝く対艦隊戦!
物資補給もとい強奪!
通りすがりのシンディック住民へのプロパガンタ(「アライアンスは正義の味方なんだよ」「逆らうとひどいからね」)!
気の乗らない艦長会議!
の大体4パターンで成り立っていて、ほぼブリッジと個室を往復するだけの日々。ただし唯一の聖域・個室も元恋人に乱入されたりして気の休まる時がありません。──と、ここまで読者側にもパターンが読めるようになると、ここはお約束通りハーレクイン展開は外せないでしょう。
今回は、一時期ギアリーといい関係になった女性政治家ビクトリア・リオーネと、旗艦ドーントレス艦長ターニャ・デシャーニの間で火花が飛び散り始めて、艦内に立ち込めるあまりのギスギス加減に、ギアリーはこれまで放置してきた二人の女性と自分の気持ちに向き合わざるをえなくなります。
今巻は読んでてお国柄なのか英語圏の海外ドラマっぽいなあ、というのが真っ先に浮かんだ感想。
元カノ・今カノの間で葛藤する主人公というのは、やはり海外ドラマ中盤の定石展開ですし、今カノが若くて一般ウケするのに対して、元カノ(Ex-GirlFriend)は主人公の操縦方法を心得ていてキャリアがあって小憎らしくて... リオーネ副大統領閣下もずばりテンプレート通りの仕上がりのキャラでございます。
リオーネはちょっと翻訳で損してるキャラなんですが(一人称が「ワタクシ」)、デシャーニにはない世慣れた振る舞いやエゲツなさ、政治家としてのキャリアをもって、ギアリーとは付かず離れずの距離をとりながら要所要所で存在感を発揮。艦隊の中で唯一軍人ではないという異色さも手伝って、なかなか魅力的なサイドキックであります。
ただ翻訳家のあとがきによるとどうもリオーネは不人気らしく、まあこれまでギアリーを手助けしながら同時にイラッとさせるのがお仕事だったのでしょうがないような。
[神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 3] 大迫 純一
[神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター 4] 大迫 純一
人間と精霊が入り混じって暮らすポリフォニカの世界では、精霊もまた定職についているわけですが、主人公レオンの職業は私立探偵と結構異色。ポリ黒の主人公二人組だったら恐らく関わらないだろうな、というアングラな界隈がレオンのテリトリーで、彼が取り扱う事件も従ってそういったものが中心。
タイトルからしてハードボイルド路線で、読後感の後味もどこか苦いものが残るシリーズです。
どうやら色々過去にあったようで、「スネに傷があるヤツは裏街道に徹するべきなのよ(念仏の鉄)」を地でいく彼ですが、精霊契約にはかなり積極的。むしろ多すぎ。
精霊は神曲楽師と契約を結び、その神曲の支援を得ることで絶大な力を発揮しますが、精霊と神曲楽師が互いにあった相手を見つけるのは砂漠の中から1粒のダイヤを探すようなもの。レオンは何故かその契約を3年おきに解消してしまう。
契約解消した楽師を憎からず思っているようなのですが、でも解消してしまう。
数百年を生きる精霊からすれば、どんなに親しい神曲楽師ともやがては死別する。人生の中で出会う大勢の中の一人でしかない。それを理解しながら、多くの精霊はパートナーと生涯を共有する。
しかし、レオンのそれは長くてたった3年。
生涯を共にするはずだった精霊から理由も聞かされないまま取り残された神曲楽師の、その後はどうなってしまうのか。しかも契約相手がカワイイ女の子──言い方を帰れば人間的にも技量的にも未成熟な楽師だったら?
今回は自分の行動が何を引き起こしてしまったのか、無残な事実が当人に突きつけられます。
何故彼は契約と解消を繰り返すのか。初登場時のポリ黒エピでもとうとうその理由は明かされませんでしたが、その何故が明かされるシリーズ後半2冊でした。
レオンは登場時から、ものすごく矛盾したキャラクターなんですけど必ずしも憎みきれないキャラクターで、ついにその謎が判明するラストはカタルシスでした。なるほどねー、そういうことかー。
[都市と星〔新訳版〕] アーサー・C・クラーク
一時は星間帝国まで築き上げながら天敵によって駆逐され、荒廃した故郷・地球に戻ることを余儀なくされた人類は、外部と隔絶された閉鎖都市ダイアスパーを建造。以来、都市に閉じこもり、平穏ながら停滞した生活を営みつづけてきた人類は、直視することもできないほど都市の外の世界に非常な恐怖心を抱くようになっていた。
そんな住民たちの中にあって何故か唯一、外界へ強烈に惹きつけられてやまない青年アルヴィンの行動が、ダイアスパーひいては人類全体の未来を変えていくという物語。
古典SFは詳しくはありませんが、時期的には閉鎖空間モノの嚆矢でしょうか。
よくあるSFではこの手のアーコロジーの耐用年数はせいぜい数百年どまりですが、さすがクラーク爺さんは言うことが違います。
10億年です。
物語が進むに従い、無限に広がっていくかのような世界観のスケールに、もうこの人が10億年つったら10億年なんだと、ただただ納得するしかありません。
想像を絶する時間のスケールを平然とつきつけてくるのもさりながら、「機械の理想形は稼動部をいっさいもたないこと」など、言うことがいちいち男前すぎるんですよねー。いやー、男だわクラーク。
楽園の泉でも思いましたが、クラーク作品に出てくる未来の技術ってあまりとっぴなウソじゃないんですよね。現実にクラークの発想に近い製品やインフラが今やっと実現している趣がありますが、今回はなんと3D・ウォークスルー機能まで登場させています。
3Dグラフィックは車の設計に用いるために開発されたそうですが、コンピュータの黎明期に、すでに3Dの用途を端的に見抜いているのが空恐ろしいです。
物事の本質を踏まえて書く、だからこそクラーク作品は時代を超えて普遍的なんだろうなと。




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